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P棟 102: 統計の啓蒙書・入門書について

巷では、ビッグデータとともに統計学が流行しているようです。 私自身、色々な職業・学科の方に統計の話をしたり、講義を受け持っているため、 そういった教育系の活動を通じて色々と思うことがあります。 こちらでは、他の方にも役に立ちそうなこととして、統計関係の入門書・啓蒙書(ここでは「統計本」と略記)での感想・意見を述べておきます。


西内 啓: 統計学が最強の学問である, ダイヤモンド社.
高橋 信 著, トレンド・プロ(マンガ制作): マンガでわかる統計学, オーム社.
向後 千春: マンガと図解でわかる統計学(別冊宝島2066) 宝島社.
石田 基広 著, (イラスト りんと): とある弁当屋の統計技師(データサイエンティスト)- データ分析のはじめかた, 共立出版.




想定読者が多彩な統計学

ひとくちに統計学といっても、実際にはかなり多岐に渡ります。 まず応用分野が人文科学・社会科学など文系から、実験科学、情報科学など様々です。 また、学問としての統計もあれば、実務に近い統計、昨今流行りのビッグデータの解析に使う統計など方法論としての統計もあります。さらに、教育レベルも確率・統計として、大学初年度に学ぶレベルから、大学院や実務まで様々です。 したがって、入門書、啓蒙書といった時には、その想定読者も色々あるわけです。ここでは、ざっくり以下のように分けてみました。
大学初年級の統計学(フィッシャーの統計、頻度論的統計)を受講している学生
心理学、社会調査、医療、生物、etc. もしくは企業の研究開発の現場などで実データを扱っていて、統計が必要な人、統計処理をしたい人
いわゆるビッグデータなどの活用に興味がある人
大学などで研究している人
さらに細かく分けることもできますが、ここで主張したいのは、 統計本に興味がある人達(著者からすれば「想定読者」;出版社からすればお客さん)が 実に多様であるということです。

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適切な統計本を選ぼう


 さて、以上のように、統計学そのものの多彩さのため、想定読者も実にさまざまです。 ですから、以下に紹介する本も含めて、統計本は、これらすべての読者をカバーすることは不可能です。 このことをまず念頭においてください。 したがって、統計本を購入される際には、著者の職業を確認、中身を見れるならぱらぱら目次などを眺め、

著者がどういう読者を想定して書いているか確認してから

本を選ぶことが望ましいです。

 Amazonのレビューを読むと、低い評価の中には、明らかにレビュアー(読者)の選択ミスと思われるものがあります。 私はこの点について解説している記事をこれまでみたことがないので、念のため例をあげておきましょう。


 例えば、自分の会社にデータ部門(IT部門)を抱えていて、ビジネスに活用したい場合。 このような場合、「マンガでわかる統計学」より「統計学が最強の学問である」の方がはるかに役に立つでしょうし、面白いと感じるでしょう。実際に、IT部門などで大量のデータ(ログ)に接しているような場合、最近、よく目にする「ベイズ統計」関係の啓蒙書も面白いと思います。

 また、統計処理をしたい人、つまり、統計を道具として使う立場の人の場合。 既にデータが手元にあるけど、そこからどうやればいいのかわからない。統計の教科書を読んだけど具体的なやり方がピンと来ないという場合、入門書を探すことになります。まず、ある程度の定型処理であれば、実用上もっとも簡単なのがエクセルを利用した統計解析になります。最近の統計本では、エクセルを使う事例を紹介している本が増えてきました。そのような本を中心に探すとよいでしょう。(ある程度、理解できていれば、エクセルでなく普通のプログラム言語でもOKです。しかし、そういったレベルの方の場合、入門書をあえて読む必要はないかもしれません。)

 学問としての統計学に興味がある(理工系の大学生)場合は、 歴史的な背景について記載した「統計学を拓いた異才たち」は、ほぼマストです。


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 すっかり前振りが長くなってしまいましたが、以下の統計本について自分の感想・意見を述べておきます。
西内 啓: 統計学が最強の学問である, ダイヤモンド社.
高橋 信 著, トレンド・プロ(マンガ制作): マンガでわかる統計学, オーム社.
向後 千春: マンガと図解でわかる統計学(別冊宝島2066) 宝島社.
石田 基広 著, (イラスト りんと): とある弁当屋の統計技師(データサイエンティスト)- データ分析のはじめかた, 共立出版.

 ぱっとみて少ないと思うかもしれませんが、これには理由があります。

 冒頭でも述べたように、私は仕事柄、色々な立場の人(学生から実務家、研究者)に、講義形式や、個人的な指導、あるいは、演習形式などで統計を教えてきました。 その関係で、私は、普通の人よりも、様々な統計本(教育目的)を大量に購入して目を通してきました。 そして、内輪では、例えば飲み会などであーだこーだと自由に語ってきました。 しかし、それをそのまま、こうしたホームページに書いてしまうと語弊があるかもしれません。 そのため、今回のように文章を公開する場合は慎重になりますし、網羅的に書こうとすると時間がかかりすぎてできないのです。

 強い要望がある、もしくは時間に余裕ができれば、今後、じわりじわり増えていくと思います。


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西内啓: 統計学が最強の学問である, ダイヤモンド社.

 著者はもともと医学部出身で生物統計を専門にされていた方のようです。 1〜4章までは、実例に即しておりさくさく読めます。実際にコンサルティングなど、ビジネスに近い分野で著者が体験してきたことをうまくまとめているからです。最近はやりの統計学をビジネスに活かしたいエクゼクティブクラスの人に向けた内容と思われます。

 また、統計を教えるときに役立ちそうな、うまいたとえ話や歴史的な話題もあり、 大学などの統計研究者にとっても新鮮な内容があります。

 一方で、5章・6章は、最近の統計学、統計研究の概論を研究畑以外の人に説明しようとしています。 しかし、こみいった話題になると数式なしで説明するのは難しいようで、失敗している感が否めません。 (説明の難しさはアウトリーチ棟で私も解説しています。


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高橋 信 著, トレンド・プロ(マンガ制作): マンガでわかる統計学, オーム社.

 マンガでわかる○○というタイトルで理工系の内容を扱う本の草分け的存在。初学者を対象にして、マンガだけ追っていってもなんとなくわかった気にさせてくれる本。Amazonでもおおむね好評のようです。 色々な説明が当時としては画期的だったんだろうと思います。

 ただ、統計の説明はともかくとして、マンガの構成、ストーリーは気に入らないため、本としての個人的な評価はあまり高くないです。また、いわゆる頻度論的統計(大学1年で習う統計はほとんどこれ。)のみしか扱っておらず、ベイズ統計をはじめとして、様々な分野に全く触れていないのも入門書としては痛い所です。巻末の補足でちょっと紹介して欲しかったですね。 (続編として、因子分析編や回帰分析編が出ていますが、そこでとまっているようです。)

 さらに、もうひとつ物足りないのは、産業への応用には触れていないことです。もちろん、昨今のビッグデータ関係への応用にも触れていないですが、こちらは出版された時代が2004年と古いためでしょう。

 また、この本では実際の数値を使って、ヒロインが計算しますし、エクセルを使って分析する方法も一応ついています。これだけで統計をマスターするのは無理ですが、統計をちゃんと勉強する際の副読本としてはちょうどよいかもしれません。

 既に手元にデータがある人、統計解析の具体的な方法を知りたい実務家には、エクセルを使って統計といった本がいくつかありますので、そちらを読まれた方が良いと思います。 この本でのヒロインは「統計のお勉強」をしているのであって、実際に実験データを前に困っているわけではない点に注意しましょう。


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向後 千春: マンガと図解でわかる統計学(別冊宝島2066) 宝島社.

 2013年9月に出たムック本です。2014年現在、文庫本が出ているようです。べたな展開や絵柄はともかく、これはマンガパートのストーリーがうまいです。高校生向けのアウトリーチを考えている時、私も結局、こういう方向のストーリーにいきつきました。 上にあるような話題になった統計本を参考にしただけあって、やや「いいとこどり」な気がしますが、

私は強く勧めたいですね!

 特に「統計学で『見えている人』になろう」という著者のメッセージ(ムック本のP14 〜P15のチャート)は極めて私の考えているものと近いです。学問的な意味での統計学と、それを活用して利益を生み出すことを切り分けている観点が素晴らしいです。

 また、この本は統計学を勉強する人向けではありません。むしろ、話題の「統計」で何ができるか、マンガで手っ取り早く知りたいという人に向いています。「マンガでわかる統計学」と違って、

短いながらもビジネス的にインスパイアしてくれるという点で高い評価です!!


巻末に統計でよく出てくる用語集があるのもいいですね。統計本の後発組として非常に練られている感があります。 他の本に比べて、この本はAmazonではあまり注目されていないようでしたので、少し強めに推しておきます。

(※ただし、学生には金儲けの道具としてでなく、まずは、学問としての統計学もしっかりと学んで欲しいと思います。社会に出るとそういう機会がなくなりますので。)


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石田 基広 著, (イラスト りんと): とある弁当屋の統計技師(データサイエンティスト)- データ分析のはじめかた, 共立出版.

 著者の方は様々なR(R・・・統計解析の「言語」;プログラミング言語みたいなものです。)関連の書籍で有名な方です。洋書の翻訳もされており、間接的にいつもお世話になっております。

 さて、今回はライトノベル(ラノベ)風にまとめたようです。小さな弁当屋で経理を担当している高校生の娘さん(ヒロインなので、当然?そこそこ可愛いという設定)にどつかれながらも、新米データサイエンティストが四苦八苦しながらデータ分析を教えて・・・という話らしいです。
 「らしい」と書いたのは、

私がストーリーのかなり最初の段階で挫折したからです。


 最初のあたり、主人公がヒロインに向かって、統計の基礎概念を「たどたどしく説明するセリフ」が読みづらいんですね。書評もおおむね好評で、電車に乗っている間にさくさく読める・・・的なことが書いてありましたが、

私は挫折しました・・・。


 著者の意図としては、データ分析の大家ではなく、新米君が、数学のあまりできない娘さんに、 しどろもどろに説明(わけわからないことをいうと、この娘さんにどつかれるという”S&M”的な世界です。)することで、読者も理解してくれるということだと思います。

その意図は極めて正しいと思います。

 実際、大家よりも、ひとつ上の先輩から教わる方がわかりやすかったりします。
しかし、私には、それが?あだになったようです。 途中で読むのが辛くなってしまいました。


 というわけで、私はこの本はきちんと読み通していません。 したがいまして、内容に関して参考になることは書けませんが、最後に批評らしいことを述べておきます。

「し、しかしですね、ホワイトボードに書いて説明した方がはるかにわかりやすい部分もあると思うんですよ。えーと、つまりですね(汗)、こんな風に線を伸ばして・・・」

というのは文章よりもマンガにしてもらった方が読みやすかった・・・と思うのです。 想定読者が違いますが↑にある「マンガと図解でわかる統計学」のような、マンガパートと図解を織り交ぜる形式の方が 設定やキャラクターが生きてきたように思います。 そして現在、こちらの本は「統計本の流行はちゃんとおさえているぜ!」というアピールのために部屋に飾っております


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さいごに

以上、すっかり長くなってしまいました。意識して書いたのは「想定読者」の部分です。 ビジネスであれば、売りたい商品、サービスがいかに素晴らしくても「誰に対して」売り込むかを間違えると売れません。想定読者については、読む側が本を選ぶわけですが、ビジネスでは、売る側がターゲットとなる顧客を適切に選ぶこと(誘い込むこと)が重要ですよね。 既にお気づきの読者もおられると思いますが、 実は、こちらのホームページ全体の構成がそれを具現化したものになっています(笑)


F. Tanaka, 2014/3/15.

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